コロナ前の話ですが、息子の卒業式に出席した。
予定では、朝8時30分から11時30分までと、かなりの長丁場。
学校の体育館に着くと、妻は前方の保護者席に座り、私と娘は後方の席に座った。
妻の席には本日の式次第が置かれていたが、私達の席には何も無いため、3時間もの間、何が行われるのか分からずに式に臨むこととなった。
まずは、来賓の方々が後方より登場…
“ぞろぞろ”といった表現がぴったりくるほど、その人数に圧倒された…
その後、主役である子供達の入場だ。
2人一組で足早に登場し、真ん中の卒業生の席に座って行く。
我が子の凛々しい顔も覗き、感慨深くなるシーンだ。
その後、全員が立ち上がり、国歌を斉唱。
ここまで、およそ15分…
小気味よいテンポで式は進む…
そしてお待ちかね、メインイベントの卒業証書授与!
6年1組の生徒から一人一人檀上に上がり、校長先生から卒業証書を受け取る。
卒業生全員の晴れ舞台…
時間を少しでも短縮しようと、一人が卒業証書を貰い校長に一礼するタイミングで、スッと次の者が横に並び、一緒に礼をする。
見事なまでの連携!
何度もリハーサルを行って来たのだろう…
子供達は卒業証書を受け取ると檀上から降り、母親達が座る前方の保護者席に向かい、そこでまた一礼をする。
私の妻は、感動でボロボロ泣いている。
周りを見渡せば、子供達が卒業証書を貰う度に、あちらこちらで沢山の感動が生まれている…
成長した息子の姿を見られただけでなく、この様な感動に溢れる場面に立ち会うことが出来たことに、とても感謝していた。
限りある時間の中で、最大限に子供達の見せ場を演出してくれたのだが、6年5組の最後の生徒が卒業証書を受け取るまでには45分かかり、式は開始してから1時間経過していた。
その後、在校生を代表して5年生からの贈る言葉と合唱、それに応える卒業生からの言葉と合唱が行われ、自分が卒業した頃と変わらぬ情景に、懐かしく温かい気持ちになれた。
式も盛り上がったところで、さあ校長先生のお話だ。
まあ、昔からどこの学校でも長く退屈な時間ではあったものの、我が子の校長も御多分に漏れず、また時代に流されることなく非常に長い。
オリンピックのスキージャンプでメダルを獲った葛西選手の話を例えとし、仲間や友情の大切さを語っている…
時間にして、20分までは到達しなかったものの、15分の「K点」を優に超えて来た…
続いてPTA会長のお話…
校長超えにまでは至らなかったものの、これまた15分の“K点”を超え…
私の手元には式次第が無かったため、卒業証書授与、在校生と卒業生の言葉の後、長時間にわたって何をするのだろうと疑問に思っていたが、これだけで30分以上の時間を消化した…
隣の娘は「もう、帰りたい」と声に出す始末。
周りの付き添いで来ている小さな子供達も皆同じだ。
在校生代表として参加している5年生も、そこら中であくびを連発している…
卒業生の顔を窺い知ることは出来ないが、どの様な表情をしているのか想像がつく…
そんな会場の雰囲気など意に介さず、式は来賓紹介へと…
会場内は更に憂鬱な雰囲気となっていたのだが、司会の先生が、「本日はご所属とお名前だけの紹介です」と断りを入れてくれたので、私は胸を撫で下ろした。
ところが、最初に紹介された市会議員の方は、自分の名前が呼ばれたのと同時に立ち上がり、お祝いの言葉を述べ始めたのだ…
“少しくらいなら”という気持ちだったのだろうが、後続のことを何も考えていない…
次に呼ばれた方も“何か一言”述べることになる。
来賓として、議員さんの様な方から、近隣の町内会の方まで来ているのだから、その人数は半端ではない。
一人15秒話したとしても相当の時間を要する。
中には、毎年出席してこの様な事態を想定していたのか、しっかりとした挨拶文を持参し、お披露目する人までいる…
その後も祝電披露があり、保護者代表の挨拶があり…
既に卒業生という主役が登場しない卒業式の情景は1時間を超え、先に味わった感動はすっかり覚めてしまっていた。
残り15分…
久しぶりに卒業生は立ち上がり、小学生生活最後の校歌を歌い、閉会の礼をした後、退場して行った。
時計を見るとジャスト11時30分…
始めは、どうしたら卒業式に3時間も掛かるのだろうと思っていたが、まさに計算しつくされたかの様な見事な時間配分…
校長の長話はまだしも、“大人の事情”によるその他の事態も想定内のことなのだろうか…
本日初めてお目に掛かった人達の“挨拶”や“一言”にこれほど多くの時間を割くのであれば、主役である卒業生一人一人が、何か一言話せる時間を設けた方がよっぽど良かったと思う…
我が子やその友人達が、卒業にあたって思うことなど、是非とも聴いてみたいものであった。
こうして、主役が誰だったのか分からない卒業式は終わった…
そして昨日、娘の学校で卒業式が行われた。
娘は在校生代表としての参加。
コロナ禍の影響で「時短」の上、会場への入場は保護者1名に限られた。
その様な中で省かれたものは ‥
先ずは来賓はPTA会長一人だけ。
校長、PTA会長も話を短くまとめ、挨拶はそれだけ。
校歌は歌わずテープが流れ、在校生も代表5人だけの出席と寂しい箇所はあったけど…
卒業証書授与はしっかりと行われ、結局、1時間半という、今までの半分の時間で卒業式は終わった。
その後は、校庭で各々のクラス担任と語らい、また恩師、両親、友人達と写真を撮るなど、卒業式で疲れ切った様子もなく、本当に晴れ晴れとした笑顔が咲いていた。
短縮された1時間半は、その様な有意義な時間に充てられた。
その笑顔を見ると、コロナ禍で、物足りない部分もあったかも知れないが、やっと主役が「卒業生」に戻って来たように感じられた。
(おしまい)
本日もお読みいただきありがとうございました。