私の祖母は、昔から何かに付けて「テレビで○○○が体に良いってやっていたから…」とか、「ラジオで×××と言っていたから…」と、マスコミが報じることは、全て正しいことだと信じ、私に色々なモノを勧めて来た。
しかしながら「眼が悪くならない」と言われパセリを一生懸命食べていたものの、パソコンという現代社会における必要不可欠な道具の存在により視力は低下…
「髪が抜けない」と言われてヒジキやワカメなどの海藻類を食べ続けたところで、私の髪は「遺伝」という宿命には勝てずに減退の一途を辿り、父や祖父と同じ容姿となってしまった…
祖母にとって、マスコミが言うこととは、科学的・医学的根拠に基づいている“真実”であり、だからこそ各局が堂々と報道しているものと思っている…
私がテレビを観ていても、最初に「業界関係者によると…」とか、「一つの話ではありますが…」などの断りを一応はしているものの、その後に述べる司会者の力のこもった口上を聴いていると、あたかもそれが“主流”な考えではないかと感じてしまうこともある。
更にそれらに同意や感嘆を示す出演者のコメントや、画面の右上などに常に表示されている「新発見」「これで○○が治る」などといったテロップを見ていれば、祖母にとって、それが本当のことであると考えてしまうのも無理はない…
現在、様々な広告物等については消費者庁の定める景品表示法にてルール化され、広告主は自身のサービス、商品の広告宣伝の表現について細心の注意を払っている。
一方で、情報発信の一番の担い手であり、消費者に与える影響も大きいマスコミの各種表現について、景品表示法の存在を認識しているのかどうか、首を傾げたくなるような番組が多い。
新聞にあるテレビ番組の放送予定を見ても、「一番○○」「必ず△△!」「ついに発見!」など、通常ならば客観的な証明が無ければ使用出来ない文句や、実際には誇張である表現がそこかしこにある…
普通の企業がそのような表現を用いるには、「当社比で○○」「△△%の可能性で」「一部例外がありますが…」などと、その表現を裏付けする客観的事実も同時に示すか、重要な注意事項も全て列挙して伝える必要がある。
表現の自由があるとは言え、現代社会における情報発信者として、世間への影響力が非常に大きいマスメディアにおいて、そのような表現が規制されていない事に疑問を感じる。
今日もまた、祖母が新たな情報を仕入れ、親切心で私に勧めて来た…
効果があるかは不明であり、あくまでも「テレビで○○さんが言っていた」というシロモノである…
時間的にも金銭的にも負担は増えるが、「テレビの○○さん」を信じるのではなく、祖母を悲しませないために、これからも実行して行くことになりそうだ…